関東土質試験協同組合
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第4回目「関東の地盤を知ろう!」

総務係長「土橋」皆さん、お久しぶりです!土橋です。今日は、「関東地方の土質」第4回目(常総粘土・成田層)について紹介させて頂きます。常総粘土じょうそうねんどは、千葉県北部から、茨城県南部の台地で、関東ローム層直下に広くみられる火山灰質の粘土層みたいです。では、大森係長!紹介お願いしま-す。

大森係長それでは、「常総粘土・成田層」の分布状態や土質工学上の特徴などを公開されている文献等から、簡単にまとめてみましょう。常総粘土も成田層もいずれも洪積世の堆積物ですね。まず、「常総粘土」ですが、千葉県から茨城県にかけて広く分布しており、「茶灰色またはオリーブ色の凝灰質粘土」が主体で、一部砂質となっている部分もあります。「浅海成堆積物である」とする意見と「湖沼堆積物である」とする意見があるようです。また、常総粘土には、粘土鉱物として「ハロイサイト」が多く含まれており、膨潤性の粘土鉱物である「スメクタイト」の混入もあることから、防災上は「やや厄介な存在」と推測されます。特に、土木工学上は難透水性(透水性が低い)のため、多量の降雨が生じる場合には、排水能力に乏しい常総粘土の分布域の斜面で、表層崩壊やすべり破壊などの事象が生じやすくなるものと推測されます。

土質試験課の羽田課長さん大森係長‼常総粘土は、よく東京の「板橋粘土」や「渋谷粘土」などと対比されるようですが、そのあたりはどうですか?「板橋粘土層」は、今から9万5千年前(下末吉ロームの上部)と対比されそうですが。また、物性値でなにか公開されているデータはないのかな?

大森係長そうですね、「常総粘土」と「板橋粘土」との対比については、テフラ分析(火山灰による詳細な年代の対比手法)でないと難しいようです。ちなみに、羽田課長!
「板橋粘土」については、杉原重夫・高原勇夫・細野衛による「武蔵野台地における関東ローム層と地形面区分についての諸問題」で、古くは貝塚(1964)が「板橋区徳丸付近を模式地とする板橋粘土が分布する豊島台の北西部を徳丸台」と呼んで【下末吉面】と対比していることを記載しています。常総粘土の物性値は、公開データがあまりなかったはず!
関東さん‼常総粘土層については、特に、筑波台地で、コアサンプルによる「変水位透水試験」の実施例があったと思うけど。

新入社員の関東真理子さん大森係長!そうですね、安原正也・丸井敦尚・布施谷正人・石井武正による「筑波台地における常総粘土層の水文学的物理特性」が挙げられます。まだよく読んでいません!!

土質試験課の羽田課長さん関東さん!筑波台地の浅層部には、新期関東ローム層と常総層中・下部の砂層に挟まれてこの常総粘土が広く分布しているよ。覚えておいてね。従来から、板橋粘土(東京豊島区)、茨城粘土(茨城中部)、常総粘土(千葉北部~茨城南部)は下末吉ローム層と対比されているみたいだよ。

新入社員の関東真理子さん羽田課長!!承知いたしました。今、読んだ結果では、次の内容に要約されそうです。

  • ① 常総粘土層の透水係数は、10-6~10-9㎝/s(10-8~10-11㎧)の範囲にあり、台地の平均値は、1.39×10-6㎝/s(1.39×10-8㎧)で、極めて透水性が低いとなっていること。
  • ② 常総粘土層と上位の新期関東ローム層との間には、2~4オーダーの透水係数の差があり、さらに、常総粘土と下位の常総層中・下部の砂層とは、3~5オーダーの差が生じていること。
  • ③ 筑波台地における常総粘土層の層厚は、15~400㎝で、その間隙率は、54~77%と一般の沖積層や関東ローム層の間隙率よりやや小さい値を示すこと。
    などが挙げられています。

土質試験課の羽田課長さんそれでは、大森係長!!「成田層」については、どうでしょうか?成田層は、常総粘土層や常総層の下位にあり、下総しもうさ層群の一部となっています。表-1には、「千葉県の自然」からの引用ですが、千葉県でも代表的な成田層は洪積世後期の堆積物である下総層群の一部で、木下きおろし部層、上岩橋部層、清川部層などから構成されています。表-1には、千葉県の代表的な下総層群の模式構成表を示しています(千葉県の自然誌から)。

表-1 千葉県の代表的な層序

表-1 千葉県の代表的な層序

大森係長ところで、関東さん!下総層群の中で、成田層は「貝化石」が多量に含まれていることで有名なのは知っている?特に、「木下きおろし部層」は、特筆すべき部層だよ。今から12万年~13万年前に古東京湾の広大な内湾に堆積した地層ですから。

新入社員の関東真理子さん大森係長!!木下ではなくて、「木下きおろし」と読むのですか?地名は難しいですね。何が特筆するのかさっぱりわかりませ―ん。教えてください!

大森係長しかたがないか? 「木下きおろし貝層」として、貝化石が露頭に密集して分布している場所が印西いんざい市にあって、その露頭は、平成14年3月29日に「国指定天然記念物」に指定されているよ。印西市のホームページによれば、「木下貝層」として指定されているのは、「木下万葉公園内の露頭」で、厚さ4.3メートル、長さ45メートルにわたって貝類の化石が密集しているのが紹介されています。私たちの近くには、縄文人が食した貝殻による有名な「大森貝塚」があるけど、「木下貝層」は人工貝塚ではなく、天然の貝化石による地層(主に、暖流系で浅海性貝類の化石からなる)のようだけど?見学に行くかい。
 また、下総層群は、中―後期更新世(45万年前~8万年前)の海水準変動を反映した「1回の海進・海退に相当する堆積サイクルを1塁層」として、下位から地蔵堂層、藪層やぶそう清川きよかわ層、横田層、木下きおろし層、姉崎層に区分され、その上部に常総粘土があるよ。特に、この木下きおろし層の堆積環境と原位置物性とを把握するために、産業技術総合研究所と農村工学研究所が合同で、千葉県成田市と印西市にかけての「ボーリング調査」を行っています。ボーリング調査の中では、コアサンプルの「半割面の詳細地質観察」と、ボーリング削孔後の孔内におけるPS検層とキャリパー検層・孔内密度検層などを実施しています。

土質試験課の羽田課長さん大森係長!!よく調べているな?そのとおりです。木下きおろし層は成田層の一部だから、成田層の物性データを知ることが可能だね。これらの調査は、報告書として提出されているよ。中澤努・坂田健太郎・中里裕臣ひろおみ「成田・印西における更新統下総層群木下層の堆積相と物性:GS-NT-1及びGS-IZ-1ボーリング調査概要」として公開されていますよ。

新入社員の関東真理子さん羽田課長!!「孔内PS検層」や「キャリパー検層・密度検層」は何の試験法ですか??

大森係長関東さん!現場で実施する試験だよ。簡単に言えば、ボーリング孔を用いて、P波速度やS波速度及び密度を一定深度間隔で測定する方法のことだよ。孔内PS検層は、「ダウンホール検層」と地下水以下での「サスペンションPS検層」の2種類が行われているよ。図-1には、両者の測定方法の概要を示すね。なお、ダウンホール検層の概要は、谷和夫・杉田信隆・西尾伸也・田中達吉「地盤材料の小ひずみでの非線形特性と地盤変形問題への適用(原位置試験法その1)」を参照しています。

図-1 孔内PS検層の概要(ダウンホール法とサスペンション法)
図-1 孔内PS検層の概要(ダウンホール法とサスペンション法)

大森係長キャリパー検層は、ボーリング孔内における削孔径の変化を深度方向に測定する方法で、密度検層のデータの補正に使用されます。また、密度検層は、孔内に下ろしたゾンデから地盤中に「γ線」を照射して、コンプトン効果(物体にX線などを照射すると、散乱が生じ入射したX線等よりも波長の長いX線等が生じる効果)による散乱γ線を検出して地盤の見かけ密度を計測する手法です。

大森係長関東さん!!今度機会があったらちゃんと説明しますから。それより、羽田課長の情報は重要だよ。報告書では、木下きおろし層上部(関東平野に広く分布)は、主に砂泥互層や砂層が卓越し、下部層は、泥層を主体とし、基底付近には砂層や砂礫層を伴っているとされているよ。この調査では、供試体ベースの物性値があまり確認できなかったので、今後物性値が見つかればいいね。
 成田市八生やよい公民館の敷地や印西市牧の原地区で実施した木下きおろし層の平均的なS波速度は、200~300㎧、P波速度が1500㎧、密度が16.7kN/㎥程度のデータが取得されているよ!
 中澤らは、木下きおろし層のS波速度の変化については、「砂層で大きく、泥層で小さい傾向があり、S波速度は粒径に大きく影響されている。砂層では、多くの層準で300㎧を超えるのに対し、下部の泥層では200㎧と更新統の地層としてはかなり低く、台地面からかなりの深度(20~40m)でありながらも工学的基盤面とはならない」として、地震動特性に対して注意が必要であるとしている。

土質試験課の羽田課長さんそれでは、私が、「工学的基盤面」について簡単に説明するよ。「地震の影響を大きく受けないところ」を地下のある深さの場所に面的に想定する。これを「地震基盤」と呼びます。一方、構造物の設計を行う場合には、深度が深い地震基盤と言う概念で設計することが困難となるため、地震基盤よりも浅い箇所で、S波速度が300~700㎧ の地層を「工学的基盤」として地震動特性を評価します。
 また、古い話になるけど、昭和42年9月に新東京国際空港周辺部の土質調査が行われ、その時、「成田層の砂」についても試験が行われているよ。詳細については、中瀬明男・柳瀬重靖・須田燕・小林正樹・勝野克・光本司・石塚忠久・阿部喜代志・岩淵哲治・藤本憲久・小川冨美子「関東ローム及び成田層砂の土質試験」として報告されている。昔の港湾技術研究所(現在の国立研究開発法人:海上・港湾・航空技術研究所、港湾空港技術研究所)の層々たるメンバーによる土質試験としても貴重な報告と言えるね。その中で、成田層の砂については、物理試験、三軸圧縮試験(圧密排水試験)、締固め試験などを実施しています。物理的性質としては、含水比が15~24%程度、固結部の湿潤単位体積質量が21kN/㎥程度、間隙比が0.66程度です。粒度特性は、砂分85.2~94%、シルト分8.3~1.8%、粘土分が6.5~4.2%程度となっていますね。また、三軸圧縮試験では、現地でサンプリングして採取した不攪乱ふかくらん試料ではなく、広い間隙比になるように攪乱試料で供試体を作製しており、排水試験時の粘着力をCd=0として、間隙比がe=0.7 の時に内部摩擦角Φd=43°程度に、間隙比e=1.1 の時に、Φd=35°と間隙比が増大すると急激にΦdが減少する傾向にあることなどを確認している。成田層の砂は、比較的流動しやすい砂である可能性が推測されるね。つまり、液状化しやすい砂と考えられそうだね。

新入社員の関東真理子さん難しいお話はその程度にしましょう。ところで、羽田課長!! 印西市でナウマンゾウが発掘されたのは、ご存じでしょうか?しかも、1個体まるまるですって⁈_ナウマンゾウと言えば、長野県の野尻湖が有名ですが、印西市でも発見なんて驚きです。

土質試験課の羽田課長さん関東さん。それは知らなかったね。へえー?1個体丸ごと見つかったの!!いつの話?

新入社員の関東真理子さん羽田課長!昭和41年6月に印西市瀬戸の印旛沼放水路にかかる市井橋付近だそうです。私も知りませんでした。最近、成田層とか調べだしたら見つけました。びっくりですよね。一度、組合のみんなで見学にいきませんか!! 「私が仕切ります」ので安心してください。

総務係長「土橋」皆さん今回のお話いかがでしたか? 今回は、色々と話題もあり、内容も難しかったと思います。次回は、多少順番が前後しますが、「下総層(成田層以外)・上総層」について紹介しますので、期待してくださいね!!

★参考及び引用させていただいた主な文献など
1) 杉原重夫・高原勇夫・細野衛:「武蔵野台地における関東ローム層と地形面区分についての諸問題」,第四紀研究,第11巻,第1号,昭和47年4月.
2) 安原正也・丸井敦尚・布施谷正人・石井武正:「筑波台地における常総粘土層の水文学的物理特性」,地理学評論,64A-10,719~727,1991.
3) 千葉県ホームページ{千葉県の自然誌}
4) 中澤努・坂田健太郎・中里裕臣ひろおみ:「成田・印西における更新統下総層群木下層の堆積相と物性:GS-NT-1及びGS-IZ-1ボーリング調査概要」,地質調査総合センター速報,No.68,平成26年度沿岸域の地質・活断層調査研究報告,P.39~51,2015.
5) 谷和夫・杉田信隆・西尾伸也・田中達吉:講座「地盤材料の小ひずみでの非線形特性と地盤変形問題への適用(原位置試験その1)」,土と基礎,45-1,1997.
6) 中瀬明男・柳瀬重靖・須田燕・小林正樹・勝野克・光本司・石塚忠久・阿部喜代志・岩淵哲治・藤本憲久・小川冨美子「関東ローム及び成田層砂の土質試験」,港湾技研資料,No.47 ,1968.
7) 印西市ホームページ、印旛村「山田橋動画」他
8) 森伸一郎・関眞一・浅野俊太郎:「細粒分の多い成田層砂の液状化特性」(出典不明)
★なお、その他の研究例としては、「成田層砂の液状化に関する研究」が、岡本正広ら、畑中宗憲ら、森伸一郎らにより公開されている。

以上

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