関東土質試験協同組合
03-3742-3131

9:00〜17:20
(土日祝休)

お問い合わせ

INFORMATION
組合情報・ニュース

第5回目「関東の地盤を知ろう!」

総務係長「土橋」皆さん! お久しぶりです。前回の「空君の液状化大実験」はいかがでしたか?空君も学校で、実験を行ったそうです。どうだったのでしょうかねー。気になりますね!!
 今回は、第5回「下総層・上総層」の紹介です。どんな内容になるのでしょうか?

新入社員の関東真理子さん大森係長!ご報告です。この間、空君のクラスで大液状化実験をやっちゃいました。大成功でしたよ。担任の「港先生」もびっくりしていましたよ。勿論、「大変感謝」されていました。大森係長と羽田課長に「ご協力感謝いたします」と過分な御礼を頂きましたから。
 今日のお話は、いかがでしょうか?前回は常総粘土と下総層の成田層などについての説明でしたけど。下総層では他にどんな層準があります?

大森係長関東さん。それでは、説明するよ。下総層群は、房総半島では、上位から姉崎層、成田層、藪層・瀬又層、地蔵堂層、金剛地層などに分類されています。その下位は、上総層となるけれど、下総層群と上総層との境界は、議論があるようだよ。例えば、菊池隆男(文献1)の「海成更新統、下総層群と上総層群の境界層序に関する再検討」論文では、地蔵堂層基底説、金剛地層基底説、長浜層基底説、市宿層基底説など複数の説がだされているみたい。

土質試験課の羽田課長さんそのようだね。もともと、下総層群は、関東平野一帯に広がる「浅海の古東京湾内に堆積した浅海性堆積物」で、どこに境界を置くかによるけど、300mから500mの層厚があり、6~9の累層があるとされていて、房総半島北部から下総台地一帯に分布しています。一方、上総層は、関東平野と房総丘陵とに広がっていた浅海から、陸棚斜面、深海の海底盆の堆積物で主として下部更新統からなり、一部上部鮮新統を含むみたいだよ。層厚は、3,000mを超えるとされており、菊池によれば、境界をどこに置くかで色々議論があるけど、房総半島中部の西部域に分布する「上総層群長浜砂礫層基底説」が有力と考えているようだね。

新入社員の関東真理子さん羽田課長!!上総層の層厚って3,000mを超えるのですか!とんでもない厚さですね。これまたびっくりですね?

大森係長関東さん、関東構造盆地という言葉は知っている?関東平野中央部から房総半島にかけての地域は、沈降盆地と呼ばれており、200万年前から現在まで沈降が進行している地域で有名だよ。この沈降運動は、「関東造盆地運動」と呼ばれています。上総層群が厚く堆積しているのは、この「関東造盆地運動」による影響と考えられるね。それでは、下総層群の物性はどうなっているかな? 関東さん!なにか文献はなかった?

新入社員の関東真理子さん大森係長! 納谷友規(文献2)による8本の基準ボーリングの結果をまとめている報告書の一部(第3章下総層群)の中に速度検層の結果が記載されているので、引用させてもらいます。

新入社員の関東真理子さん下総層の下部である「地蔵堂層」については、【「砂層から砂質泥層」からなる地層で、下部のレキ混じり砂層でS波速度が400~510㎧、上部のレキ混じり砂層で400~620㎧程度とやや高い値となっています。次に、「藪層」は、泥層~砂質泥層で、下部層のS波速度は、300~370㎧で、中部層は300~410㎧、上部の砂層では、300~550㎧と上部に向かって速度が大きくなっている。】と記載されています。大森係長!!速度検層以外の物性はなかなかみつけられませんでした。

大森係長関東さんお疲れ様です。下総層はこの程度にして、「上総層群」について調べてみて!!

新入社員の関東真理子さん大森係長!4件ほどの文献が見つかりました。鈴木尉元(文献3)による「房総半島における上総層群の堆積と構造運動」と題する論文と、井波和夫(文献4)「房総半島上総層群泥岩の圧密について」、及び細野高康(文献5)「上総層群中部層シルト岩の強度・変形特性」及び細野高康(文献6)「上総層群の高圧圧密特性」などが代表的と思われます。

土質試験課の羽田課長さん鈴木ら(文献3)によれば、「上総層群は、海成の鮮新世から中期更新世の地層で、下位の勝浦層・浪江層・大原層・黄和田層の堆積の中心は、房総半島中東部に位置するが、中部の大和田層・梅ケ瀬層、国本層では順次半島中央部に移り、最上部の笠森層では、房総半島北東部と東京湾北部に移動するようです。これら各層の堆積環境は、下部から上部に向かってやや浅海性から次第に深海性となり、最上部は浅海性へと変化する」としていますね。
 上総層群では、水溶性の天然ガス鉱床を有しており、茂原や九十九里浜沿岸などでは、盛んに水溶性天然ガスの生産と鹹水(かんすい:天然ガス採取の付随水)に含まれるヨウ素の抽出が行われていると聞いているけど。また、昔は地盤沈下との関連性で規制が行われていたはずだね。

大森係長羽田課長! さすがですね。私もその話は存知しています。マニアックな情報ですが、日本は、世界のヨウ素生産量の30%を誇っていて、代表的な輸出製品です。また、ヨウ素利用や利用産業を育成するために、平成10年4月には、「ヨウ素利用研究会(平成19年7月にはヨウ素学会に改称)」が産・学・官で発足されています。さらに、日本の企業(文献7)は、「ヨウ素欠乏症による発育不全の防止」のために、国連児童基金や国際協力事業団(JICA)、ヨウ素欠乏症国際対策機構などに積極的な協力をしているみたいだよ。関東さんすごいでしょう。この話を知っている人は、そんなに多くないと思うよ。
 それでは、上総層群の層相区分表は、表-1 「三梨他(文献8):1979」の改表を示し、全体を眺めてもらいますね。上総層群については、房総半島中・東部で代表的な層相がみられます。上部から笠森層、長南層、柿ノ木台層、国本層、梅が瀬層、大田代層、黄和田層、大原層、浪花層、勝浦層、黒滝層(黒滝不整合)でその下部は、三浦層群となっているよ。
 関東さん!何か文献紹介できる!

表-1 上総層群の層相区分(三梨他:1979)を改表
表-1 上総層群の層相区分(三梨他:1979)を改表

新入社員の関東真理子さんそれでは、まず、細野高康ら(文献5)による「上総層群中部層シルト岩の強度・変形特性」の論文が挙げられます。この論文は、上総層群の中部層である「柿ノ木台層と大田代層」について高圧定ひずみ試験(高圧圧密試験)、三軸圧縮試験(UU試験・CU―試験・CD試験)、破壊供試体の中央部をスライスした試料による走査型電子顕微鏡破断面観察(SEM観察)などを実施しています。
 論文では、柿ノ木台層の高圧圧密試験から求めた圧密降伏応力は、Pc=83.2kgf/cm2(約8,162kN/m2)で、大田代層が175kgf/cm2(約17,168kN/m2)と高い圧密降伏応力を示していると報告されていますね。また、三軸圧縮強度試験から、柿ノ木台層の詳細な強度・変形特性を検討しています。さらに、三軸圧縮試験と高圧圧密試験とから、柿ノ木台層の先行圧密応力(P0)を35~40kgf/cm2(約3,434~3,924kN/m2)と推定していますね。

土質試験課の羽田課長さん関東さん大変面白いですね。各種三軸圧縮強度試験の破断後供試体のSEM観察と応力・ひずみ関係や目視観察結果などがうまく整合したようですね。

新入社員の関東真理子さんもう1編は、細野高康ら(文献6)による「上総層群の高圧圧密特性」と題する論文です。本論文では、上総層の各層序「柿ノ木台層~黒滝層」までのコア試料により、高圧圧密試験、物理試験、一軸圧縮強度試験などを実施しており、柿ノ木台層~梅が瀬層までを「中部層」に、大田代層~黒滝層までを「下部層」としていますね。
含水比は、23.6~32.4%程度、初期間隙比は0.68~0.89程度、一軸圧縮強度(qu)が21~126kgf/cm2程度(約2,060~12,361kN/m2)、圧密降伏応力が73~261kgf/cm2(約7,161~25,604kN/m2)程度の値を示していると報告されています。

大森係長ちょっと余談だけど「上総掘り」について千葉県のホームページ(文献9)から引用させてもらいます。上総掘りについての概観は、写真-1に示しています。関東さん参考にしてね。
 上総掘りは、竹ヒゴとヒゴグルマを利用し井戸を掘る技術として、千葉県君津市の小糸川流域や小櫃川(おびつ川)流域で文政年間(1818~1830年)に開発されています。農業用水や飲料水の確保に利用され、明治20年(1887年)頃には完成し、竹ヒゴ利用により200間(360m)以上の掘削が可能となったようだよ。それでは、上総掘りの開発地である君津地区の深度300m以深では、どんな地層が出てくるのでしょうか?
 小島圭二らの「東京湾岸地域における地質工学―50年の実績―」(文献10)や千葉県の資料によれば、「東京湾アクアラインの構造物と地質断面」が掲載されており、風の塔「川崎人工島」の底盤(T.P -120m付近)は、D5(上総層上部層)に基礎を有していることが判ります。さらに、木更津側はT.P -60m付近までD5層がせりあがっています。君津地区は木更津地区の隣なので、深度300m以深では、上総層上部層(笠森層など)が分布している可能性が想定できそうだけど、どうかな。
 上総層群などの堆積性軟岩の物性データは、このような巨大構造物(橋梁基礎)の基礎岩盤評価や地下深部への地震計設置に関わる物性評価、水溶性天然ガス採取方法の検討や将来の大都市周辺部の大深度地下利用に向けた取り組みなどに生かされます。

写真-1 上総掘りの概観(出典:「上総掘り」Wikipediaより)

写真-1 上総掘りの概観(出典:「上総掘り」Wikipediaより)

新入社員の関東真理子さん私は本当にびっくりです。「上総掘り」知りませんでしたから!! ところで、上総層群とほぼ同時代の関西では有名な「大阪層群」と比較するとどうでしょうか?大阪層群とされているのは、少なくても第三紀末の鮮新世末から第四紀中期の地層です。なお、砂礫層の間によく連続する「海成の粘土層(Ma層)」が何枚も挟んでいて、Ma10~Ma-1層までがいわゆる大阪層群に相当するみたいです。時代が同じでも上総層と大阪層群とでは、年代効果や堆積構造に相当差がありそうなので物性面では違いがあると思います。

土質試験課の羽田課長さんそうかな?宮川久ら(文献11)「各種原位置地盤調査と室内試験による大阪層群の変形特性」では、大阪層群最下部層の圧密降伏応力のデータが公表されているよ。大阪層群最下部層の圧密降伏応力は、Pc=6,000~8,000kN/m(約61.2~81.6kgf/cm2)程度です。細野ら(文献6)の上総層中部層柿の木台層と比較してみましょう。
 柿の木台層試料の初期間隙比は0.76程度で、圧密降伏応力は、Pc=73kgf/cm2(約7,161kN/m)ですから、大阪層群最下部層と上総層群中部層とは似通った圧密降伏応力となっているようですね。したがって、物性面から比較すると大阪層群最下部層は、上総層中部層(柿の木台層)あたりと対比できる可能性が高いと想定されそうですね。関東さんどう勉強になった?

★:参考及び引用させていただいた主な文献など

  1. 1) 菊池隆男「海成更新統、下総層群と上総層群の境界層序に関する再検討」,地球環境研究,Vol.6,2004.
  2. 2) 納谷友規・中澤努・野々垣進・中里裕臣・風岡修・吉田剛:「第3章下総層群」.
  3. 3) 鈴木尉元・小玉喜三郎・三梨昴:「房総半島における上総層群の堆積と構造運動」,地質調査所月報,第34巻,第4号,P.183~190,1983.
  4. 4) 井波和夫:「房総半島上総層群泥岩の圧密について」,地質調査所月報,第34巻,第4号,P.207~216,1983.
  5. 5) 細野高康・中島雅之・小泉和広・杉田信隆・小川正二:「上総層群中部層シルト岩の強度・変形特性」,応用地質34巻,5号,1993.
  6. 6) 細野高康・小泉和広・杉田信隆・小川正二:「上総層群の高圧圧密特性」,応用地質34巻5号,1993.
  7. 7) 関東天然瓦斯開発株式会社ホームページ(天然ガスについて、ヨウ素についてなど)
  8. 8) 三梨他:「東京湾とその周辺地域の地質、特殊地域図(20)地質調査所10万分の1地質説明書,P.91,1979.
  9. 9)千葉県ホームページ「上総掘りの技術」、「東京湾アクララインの構造図」など
  10. 10)小島圭二・大塚康範・大野博之・軽部文雄・土屋彰義・徳永朋祥:「東京湾岸地域における地質工学―50年の実績―」,応用地質,第50巻,第3号,2009.
  11. 11)宮川久・中島啓・龍岡文夫:「各種原位置地盤調査と室内試験による大阪層群の変形特性」,土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月).

総務係長「土橋」土橋です。第5回の話題提供は、皆さんいかがでしたか?第6回は、当初と少しテーマが変わりますが、「相模層群・逗子層群・三浦層群」についての話題提供となります。皆さん!コロナ禍がまだまだ続きますが、健康には十分留意してくださいね!!!

以上

「関東の地盤を知ろう」コラム一覧へ戻る


組合情報・ニュースに戻る