関東土質試験協同組合
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第3回目
「関東の地盤を知ろう!」改訂版

総務係長「土橋」

皆さん‼お久しぶりですね。土橋です。今日は、「関東地方の土質」第3回目(東京湾周辺の土質:「東京層群(東京層・東京礫層)」)について紹介します。本日は、羽田課長、マリコさん、大森係長、そして空君も登場します。特に、まず、大森係長の紹介をしたいと思います。まじめな大森係長(33歳になりました)‼自己紹介お願いします。

大森係長

大森です。当組合の試験課係長を拝命しています。私は、国立大工学部の土木工学出身ですが、就職氷河期で希望する大手建設会社に入社できず、5年前まで親戚の社会保険労務士事務所で労働保険関係の業務を手伝っていました。当組合に入ってまだ5年と経験は浅いですが、羽田課長の下で試験課係長として頑張っています。出身は大田区上池台です。皆さんよろしくお願いします。

土質試験課の羽田課長さん

大森係長‼聞いてくださいね。今日は、「東京湾周辺の土質(東京層群)」について、その概要を紹介することになっているのだけど。何か紹介できるネタはない?
あ、そうだ、関東さんも何かない?

新入社員の関東真理子さん

羽田課長‼お忘れですか??空君の宿題のことですけど。どうします。私は、液状化の土層実験がいいのではないかと思います。理屈は大切ですけど、小学生ですから、まず、「液状化現象とは何かを」見てもらうのはどうでしょうか⁇

土質試験課の羽田課長さん

関東さん、そうだったね。その考えいいと思うよ。是非、大森係長と一緒に簡単にできる土層実験について考えてみてよ‼

大森係長

羽田課長!判りました。あとで、関東さんと一緒に「空君作戦」を検討します。でもその前に羽田課長のお話ですが、東京層群と言えば、更新世の地層で、今から73万年前から6万年前の地層ですね。確か、東京付近では、東京層群として、東京層の他に高砂層や世田谷層などがグルーピングされていたと思います。東京層や東京礫層について、図-1に横井技術士事務所の横井(文献1)には、山の手から下町にかけた模式断面図が掲載されていたので、参考にしてみて。

図-1 山の手から下町にかけた東京層群の分布イメージ1)
図-1 山の手から下町にかけた東京層群の分布イメージ1)

新入社員の関東真理子さん

大森係長‼さすがですね。私も、一つ記憶があります。西新宿の高層ビルの杭基礎は確か「東京礫層」に支持されていたのではないでしょうか?生まれが立川で新宿に近いですから、少しは知っています!

土質試験課の羽田課長さん

大森係長、関東さんよく覚えているね。昭和46年竣工の「京王プラザホテル」や新宿住友ビル、KDDビル、サンシャイン60、などは確かに「東京礫層(Tog)」を支持層としているようだよ。この東京礫層を支持層としているのは、最近では、東京スカイツリー(634mの自立式電波塔として世界一)が挙げられるね。新宿付近では、10m深さあたりにこの「東京礫層」が確認されるけど、東京スカイツリーのある東京墨田区の「押上・業平橋駅周辺」では、出現深度が50m深と深くなってきているよ。この礫層は、新宿から東京低地に向けて傾斜しているのが理解できるね。

大森係長

そうですね。そう言えば「業平橋」って、あの有名な在原業平(平安時代初期、6歌仙の一人)に由来していたと思いますが、さらに近くには「言問橋」がありましたね。これはもう有名すぎて皆さんご存じと思いますけど、歌がありましたね?

新入社員の関東真理子さん

私、知っています。えーと、「名にし負はば、いざこと問はむ都鳥、わが思う人はありやなしやと」です‼伊勢物語の9段「東下り」や「古今和歌集」に収録されていますけど。そうそう、「都鳥」は、「ユリカモメ」のことですけど。

土質試験課の羽田課長さん

ところで、大森係長、東京層(To)は、どんな環境で形成されたのかわかりますか?また、土質工学的に問題となることはないでしょうか?

大森係長

そうですね。岡重文(文献2)によれば、「約14.7万年前~13.2万年前までの間に起きた海水準上昇(下末吉海進)によって、現在の関東平野が広がる地域に「古東京湾」と呼ばれる広い内湾が形成され、そこに堆積した浅海・内湾性の堆積物が、東京層である。」と述べています。したがって、東京層は海成層と判断できますね。
さらに、遠藤毅他(文献3)によれば、東京層群のうち「高砂層(一部東京層)」について若干の土質データ(相関図)が記載されています。間隙比e=0.7 ~2.1程度、湿潤密度ρt=1.5~2.1g/cm3程度です。なお、自然含水比Wn=30~70%、一軸圧縮強度qu =2~30×102kN/m2、圧密降伏応力Pc=5~15×102kN/m2(東京層40×102kN/㎡)程度は見積もれそうです。

土質試験課の羽田課長さん

いわゆる東京層はどうでしょうか?例えば、先ほどの東京スカイツリーに関する施工技術について書かれた文献、佐藤眞弘(文献4)の論文では、タワーの建設地(押上・業平橋駅周辺)の地質推定断面図(図-2 に佐藤原図を簡略化した改図)が掲示されており、それをみると、上部からB(表土・埋め土)、Yuc (有楽町層上部粘性土層)、Yus(有楽町層上部砂層)、Ylc1(有楽町層下部第一粘性土層)、Ylc2(有楽町層下部第二粘性土層)、bl(埋没ローム層)、bts(埋没段丘砂質土層)、btg(埋没段丘礫層)、Tos(東京層砂質土層)、Tog(東京礫層)、Kas(上総層群砂質土層)の層序となっています。
ここで、N値=60以上のTog層は杭の支持層としていますが、その上の有楽町層は層厚25~30m程度堆積していると記載されていますよ。相当沖積層が厚く堆積していますね。

図-2 スカイツリーの建設地の地質推定断面図(佐藤原図を簡略化:色調はJISA0204には準じておらず、任意に着色)
図-2 スカイツリーの建設地の地質推定断面図
(佐藤原図を簡略化:色調はJISA0204には準じておらず、任意に着色)

土質試験課の羽田課長さん

いわゆる東京層はどうでしょうか?例えば、先ほどの東京スカイツリーに関する施工技術について書かれた文献、佐藤眞弘(文献4)の論文では、タワーの建設地(押上・業平橋駅周辺)の地質推定断面図(図-2 に佐藤原図を簡略化した改図)が掲示されており、それをみると、上部からB(表土・埋め土)、Yuc (有楽町層上部粘性土層)、Yus(有楽町層上部砂層)、Ylc1(有楽町層下部第一粘性土層)、Ylc2(有楽町層下部第二粘性土層)、bl(埋没ローム層)、bts(埋没段丘砂質土層)、btg(埋没段丘礫層)、Tos(東京層砂質土層)、Tog(東京礫層)、Kas(上総層群砂質土層)の層序となっています。
ここで、N値=60以上のTog層は杭の支持層としていますが、その上の有楽町層は層厚25~30m程度堆積していると記載されていますよ。相当沖積層が厚く堆積していますね。

新入社員の関東真理子さん

羽田課長!東京層の堆積状況はよくわかりました。有楽町上部層や下部層の下部に出現するのですね。このあたりでは、「七号地層」が出てこないみたい。ところでこの間、駒沢大学の角田清美(文献5)の論文を拝読したのですけど、東京層砂層は、営団地下鉄半蔵門線(九段坂下駅~日本橋人形町駅間)に出現し、また、地下鉄日比谷線(霞が関駅~銀座駅間)では、東京層砂層及び砂礫層とシルト質砂が出現しており、さらに、虎ノ門三丁目の愛宕山とJR新橋駅間の断面にも東京層砂層が認められています。スカイツリーの付近も有楽町層の下部に東京層が出現する層序となっていますね。羽田課長!残念ですけど東京層の物性データは見つかりませんでした。

土質試験課の羽田課長さん

関東さん了解です。色々調べてお疲れ様。ところで、東京層のような洪積の砂層では液状化の心配はいらないの?ここで、慣例的に洪積層と表現させてもらうけど、そのあたりはどう?一般的には、洪積層は液状化対象層として考えないことになっているはずだけど。

大森係長

そうですね。羽田課長、関東さんの代わりに私が説明しますよ。任してください。
 森伸一郎他(文献6)の論文では、課長の指摘されていることが判ると思います。森伸一郎他は、東京都新宿区四谷一丁目先の遺跡調査で、江戸城外堀の盛土周辺で「地震の痕跡」が検出され、特に地震の液状化によると考えられる「噴砂脈」を主として調査しています。
 結論では、この噴砂脈の供給源が洪積層である東京層砂層の「最上部層」にあることを示しています。すなわち、噴砂脈と堆積物との「重鉱物分析や珪藻分析など」で供給源の特定をおこなっています。さらに、興味深いのは、東京層砂層を液状化させた歴史地震が3つあり、推定された地震はいずれも「江戸直下型の地震」で、江戸で「震度ⅵ程度」と見積もれるものの、盛土の地震被害は、軽微だったことなどを結論付けています。

新入社員の関東真理子さん

大森係長‼つまり、洪積層の砂層でも沖積層や埋土のように、N値が小さい場合では、液状化するぞ‼と言うことですね。過去の遺跡からその痕跡を探すなんて面白いなあ。私も一度地震遺跡調査をやりたい‼‼

土質試験課の羽田課長さん

大変面白いね。「頭から洪積層は液状化なんかしない」と決めつけているのは、本当に「木を見て森を見ず」の状態だったね。当然だけどN値や試料の状態などよく観察して試験を考えないといけないね。大森係長よろしく!
 ところで、東京層についてもあまり土質データが公開されていないけど、これからは、組合員の皆さんにも協力頂き、是非東京層の土質データの収集に努力したいですね。
 それでは、大森係長、関東さんと一緒に「空君大作戦」」を検討してみて‼

新入社員の関東真理子さん

承知いたしました。では、私が「仕切らせて頂きます‼」
まず、大森係長!次の道具を用意してください。プラスチック製の半透明のボックス1個(幅350㎜×奥行き200㎜×高さ180㎜程度)、小型スコップ1個、砂(標準砂20~30㎏程度)、小型の建物の模型、フォーク2本(建物の杭基礎の代わり)水2ℓ程度で小型土層の液状化実験ができると思いまーす。標準砂がない時は、公園の砂場の砂を少々借用しましょう。その時は、一度洗浄しないとダメですけど。そして、後で戻すのを忘れないようにしないとね。そうそう、あとは、30~40㎝の塩ビ管の切れ端2本ぐらい。コロにするので、足場パイプの切れ端でもいいですけど。

図-3 小型土層による液状化現象再現実験
図-3 小型土層による液状化現象再現実験

南大田小3年の空君

こんにちは‼空です。マリコおねえさんいますか!
「液状化の話」どう?何かわかりやすいお話ある?

新入社員の関東真理子さん

空君、こんにちは‼液状化の件、今、準備しているわよ。お話ではなくて簡単な土層実験を考えています。準備ができたら、空君も一緒に実験手伝ってね。空君の班のみんなに教えてあげてよ。今、大森係長が道具を準備しているから。
 空君!ところで「液状化現象」はどんな現象かわかる⁇

南大田小3年の空君

マリコおねえさん、まったくわからなかったけど。お父さんに聞いてみたら、お父さんが言うには、「大きな地震によって地盤がゆすられ、砂が文字通り液状になって流動化する現象だよ」って。でも、僕まだその現象みたことがないのでイメージが湧かないよ。お父さんが言うには、「地盤が液状化を起こすと家の転倒、水道管の破裂やマンホールの浮き上がりなど色々被害が出るぞ!」って話していたよ。

新入社員の関東真理子さん

そうそう。大変なのよ!空君。液状化実験の準備ができたら、大森係長さんと一緒に空君も実験に参加するのよ‼(次回は実験の状況を数枚の写真で紹介しますね)。

南大田小3年の空君

マリコおねえさん‼わかりました。楽しみだな。よろしくお願いしまーす。

総務係長「土橋」

今回は、東京湾周辺地域における洪積層として、東京層や東京礫層についての話題提供となりました。また、空君の宿題はいよいよ本格的な段階に入ります。どうなるのでしょうか? 次回は、「空君の液状化実験特集」を紹介します。期待してください!!!

★参考及び引用させていただいた主な文献など

  1. 1) 横井技術士事務所:「地盤の種類(伸びゆく足立より)」
  2. 2) 岡重文:「関東地方南西部における中上部更新統の地質」,地質調査所,1991年.
  3. 3) 遠藤毅・中村正明:「東京都区部の深部地盤構造とシルト層の土質特性」,土木学会論文集,No.652,Ⅲ-51,pp.185~194,2000.
  4. 4) 佐藤眞弘:「東京スカイツリーの施工技術(超高層タワーを支持する節付き壁杭)」
  5. 5) 角田清美:東京都心・「日比谷の入江」の埋没地形と有楽町層,駒澤地理No.50,113 ~120,2014.
  6. 6) 森伸一郎・池田悦夫:「東京層砂層の液状化の痕跡調査と一考察」.土木学会論文集No.582 /ⅲ-41,247-263 ,1997 .12 .

以上

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