関東土質試験協同組合
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岩石試験を知ろう!!

 皆さん!!いよいよ「岩石試験を知ろう!!」の連載が開始されます。六郷課長にそっとヒアリングしたところ、まず、第1回は、身近に存在する「岩石の分類」から話を進めるようです。では、六郷課長!話を進めてください!!

それでは、皆さんの周りにある「岩石」の定義は、どうでしょうか?一般的には、「岩石とは各種の鉱物の集合体」と考えられていますね。これは覚えておきましょう。では、「岩石の分類」について簡単に説明しますね。表-1には、岩石の成因別に大まかな区分として、火成岩、堆積岩、変成岩の3種類に大別しています。

表-1 岩石の成因による分類
表-1 岩石の成因による分類

火成岩は、マグマが冷却して固まったもので、火山岩と深成岩とに分類されます。なお、私が学生の頃には、この他に半深成岩がありました。半深成岩は、「深成岩と火山岩との中間的な岩石」とされており、中途半端な取り扱いでしたが、現在ではどちらかに分類され、ほとんど使用されていないようです。
 火山岩は、流紋岩・安山岩・玄武岩などが代表的で、深成岩では、花崗岩・閃緑岩・斑レイ岩などが知られており、マグマの冷却過程で、❶地表付近で急速に冷却された場合、❷徐々にゆっくりと冷却された場合では、鉱物結晶の成長が異なります。❶の急冷の場合では、含有している鉱物が急速に冷却されるため、大きな結晶には成長できませんね。したがって、斑状組織(斑点状の結晶とそれを取り巻く基地「石基」とからなる)と呼ばれる構造になります。一方、❷は、地下深部でゆっくりと冷却されるため結晶が大きくなり、一様に同じような大きさの結晶となるので「等粒状組織」と呼ばれ、花崗岩が代表的な岩石です。表-2 には、火成岩の代表的な岩石写真をまとめています。

表-2 火成岩の分類(写真出典:山口大学岩石資料・岐阜大学岩石資料)
表-2 火成岩の分類(写真出典:山口大学岩石資料・岐阜大学岩石資料)

 では、山王係長!堆積岩の説明はどうでしょうか!

山王です。堆積岩はわが国で最も産出する岩石で、一般的な堆積岩の分類は、「粒子サイズ」で分類することになっていますよ! 砕屑性堆積岩としては、皆さん良くご承知の「礫岩・砂岩・シルト岩・泥岩」が挙げられます。当然、粒子サイズの大きさからは、礫岩(粒径2㎜以上)、砂岩(粒径1/16㎜以上2㎜以下)、シルト岩(1/256㎜以上1/16㎜以下)、泥岩(1/256㎜以下)に分類されます。私は、現在、神奈川県に住んでいますけれど、このあたりで「礫岩」が特徴的に含まれている地層としては、小仏層群(神奈川県最古の地層)や三浦層群、足柄層群(礫岩主体の「瀬戸層」)(★)などがあります。表-3 は、代表的な砕屑性堆積岩の写真をまとめています。
 一方、火山の爆発的な噴火によって固結したマグマが粉砕され、周囲に散乱して堆積したものは、火山砕屑岩と呼ばれて、堆積岩に分類されています。さらに、火山砕屑岩類は、含まれる岩片の種類によって分類されます。表-4 には、代表的な火山砕屑岩類の写真をまとめていますので、参考にしてください。

表-3 代表的な砕屑性堆積岩例
表-3 代表的な砕屑性堆積岩例

表-4 代表的な火山砕屑岩例
表-4 代表的な火山砕屑岩例

最後に「化学的堆積岩」(生物的堆積岩)について説明しますね。蒲田さんも良く聞いていてね! 化学的堆積岩の代表は、海水や湖水、地下水などから生じる沈殿物や生物の遺骸の集積などにより固まった岩石で、❶主に炭酸塩(CaCO3)からなるものと、❷シリカ(SiO2)などからなるものとの2種類があります。❶炭酸塩起源の岩石(炭酸塩鉱物を重量で50%以上含有する堆積岩)では、ドロマイト(カルシウム及びマグネシウムの炭酸塩鉱物のみからなる:CaMg(CO3)2やアラゴナイト(CaCO3)、方解石(カルサイト)(CaCO3)などが代表的よ。この他に、陸地に閉じ込められた海水が蒸発して出来た岩石(蒸発岩)としては、石灰岩(この場合は非生物起源)で、サンゴやフズリナなど炭酸カルシウムの殻をもつ生物の死骸からできた石灰岩は生物起源です。その他には、石膏(硬質石膏:CaSO4)、岩塩(塩化ナトリウム:NaCl)などが知られているわね。
 一方、❷シリカが主成分の堆積岩は、代表例はチャートや石灰岩で、チャートは、二酸化ケイ素の殻をもつ放散虫などのプランクトンが深海底で降り積もってできた岩石で、大変硬いので知られているわよ。では、蒲田さんに質問です! 「石灰岩とチャートとでは、どちらが塩酸に溶けるのか」わかる!中学で習ったはずだけど!

山王係長!勿論覚えています! 昔、男子生徒と実験やりましたから。うふふ!!
 石灰岩の主要成分は「CaCO3」で、チャートの主要成分が「SiO2」、つまり、ケイ素の酸化物ですよね。おそらく、酸性酸化物になるので、酸には溶けないのではないでしょうか!だから、塩酸に溶けるのは、「石灰岩」だったと思います。

答えは「石灰岩」で正解よ。よくわかったわね!化学式では次のようになるわよ。

CaCO32HCℓ  →  CaCℓ+H2O+CO2

つまり、塩化カルシウムと水、それに「二酸化炭素の泡」がぶくぶくと出ます

 次は、変成岩について簡単に説明するわね。変成岩の定義は、「変成岩は、原岩に新たに熱・圧力の変成作用を受けることで造られる岩石」です。通常、3種類に分類されます。❶広域変成岩(熱と圧力とを同時に受けてできた岩石)、❷熱変成岩(あるいは接触変成岩で、主に強い熱を受けてできた岩石)、❸動力変成岩(断層作用に伴って、その周囲の岩石が変形・破砕されてできた岩石)です。では、広域変成岩と熱変成岩(接触変成岩)とについて説明しますね。

❶広域変成岩とは、原岩が地下深部の高温高圧状態下で形成された変成岩です。広域変成岩は高温の条件下でせん断応力を受けることが多いため、縞状構造を有するか、鉱物が特定方向に並んで成長するなど、岩石に「方向性のある構造」が見られる特徴があります。結晶片岩や片麻岩などが知られていますね。特に、広域変成作用はプレート境界において起こることが多く、帯状分布域を持つので広域変成帯と呼びます。日本で代表的な広域変成帯は、三波川変成帯、領家変成帯、飛騨変成帯、三郡変成帯、阿武隈変成帯などです。

写真-1 秩父長瀞の岩畳(国の天然記念物)(六郷課長の撮影:結晶片岩)   写真-1 秩父長瀞の岩畳(国の天然記念物)(六郷課長の撮影:結晶片岩)
写真-1 秩父長瀞の岩畳(国の天然記念物)(六郷課長の撮影:結晶片岩)

熱変成岩(あるいは接触変成岩)は、マグマの熱により変成したもので、ホルンフェルス(主に泥岩や砂岩が熱を受けて緻密になった岩石)や結晶質石灰岩(大理石:石灰岩が再結晶して粗粒になった岩石)などが知られていますね。特に、ホルンフェルスに関する露頭として有名なのは、山口県須佐湾で観察できるわよ。この須佐湾のホルンフェルスの露頭は、平成30年2月18日の日経新聞(★)の「一度は見たい地層10選」の第2位に選出されているのよ!この時の第1位は東京都大島町の大露頭だって!本当にすごい露頭だから!!写真-2 には、なんと私の撮影による須佐湾の断崖の写真を載せています。皆さんなかなかの迫力でしょう!! I really like it too.
 また、表-5 には代表的な変成岩の例を載せています。

表-5 代表的な変成岩の例(広域変成岩・熱変成岩)
写真-1 秩父長瀞の岩畳(国の天然記念物)(六郷課長の撮影:結晶片岩)

写真-1 秩父長瀞の岩畳(国の天然記念物)(六郷課長の撮影:結晶片岩)   写真-1 秩父長瀞の岩畳(国の天然記念物)(六郷課長の撮影:結晶片岩)
写真-2 須佐湾のホルンフェルスの断崖(なんと!山王係長の撮影です!)

では、最後に、我が国でも良く知られた「露頭」について、一部を紹介しますね。山王係長や蒲田さんも興味があると思います。どうですか?
 まず、「安山岩」の露頭では、なんといっても福井県の「東尋坊」ですね。輝石安山岩の大規模な柱状節理で世界的にも有名です。東尋坊を含めて世界でも3箇所しかない大変貴重な景勝地で、国の天然記念物に指定されています。写真-3には、この貴重な輝石安山岩の柱状節理の断崖全景を示しています! 皆さんどうですか!!
 次に、玄武岩の露頭として有名な兵庫県豊岡市の「玄武洞」です!なお、「玄武洞」は、江戸時代の文化4年(1807年)に、幕府の儒官であった柴野栗山(しばのりつざん)が「玄武洞」と命名したとされています。その後、明治17年(1884年)に東京大学の小藤文次郎(ことうぶんじろう)博士が、玄武洞の名を用いて、この岩石名を「玄武岩」と命名したといわれています。おどろきましたね! 写真-4には、玄武洞の大露頭を掲載しています。兎に角ビックリものですよ!! 小藤文次郎博士は、ドイツ地理学を日本に導入した人物で、日本の地質・地形学の揺籃期に幅広い分野で貢献した地球科学者として知られています。

写真-3 東尋坊(輝石安山岩の柱状節理)(★3)
写真-3 東尋坊(輝石安山岩の柱状節理)(★

写真-4 玄武洞(玄武岩の柱状節理)(★4)
写真-4 玄武洞(玄武岩の柱状節理)(★

また、ここは、大正15年に京都大学の松山基範(まつやまもとのり)博士が、地球磁場の逆転現象を発見した場所としても大変有名な場所ですよ。ちなみに、露頭の傍で方位磁石を向けてみると、N極とS極とが反転するのがわかるそうですよ!!

六郷課長!!地球って本当に素晴らしい星ですね。色々ありすぎて感動です!!
Really, He is a person of encyclopedic knowledge and strong memory. Wow!

<引用・参考文献など>
(1)2022年度特別展展示解説書:神奈川県立生命の星・地球博物館.
(2)日本経済新聞:「一度は見たい地層10選」,平成30年2月18日版.
(3)観光スポット「東尋坊」:福井県坂井市観光ガイドWeb旅ナビ.
(4)玄武洞公園:きのさき温泉観光協会公式サイト,城崎温泉.

以上

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