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第2回目岩石試験を知ろう! 岩石試料の採取

皆さん!!お久しぶりです。「関東の地盤を知ろう!!」では大変お世話になりました。土質試験課で係長を拝命している大森です。羽田課長から六郷課長他担当の「岩石試験を知ろう!!」の第2回の案内係を仰せつかりました。皆さん!!第1回目の「岩石の分類」どうでしたでしょうか?色々詰まっていて肩が凝ったのではないでしょうか? 山王さんは真面目一方ですから、盛沢山だったと思います。それでは、第2回「岩石試料の採取方法」について六郷課長・山王係長、蒲田さんに楽しく説明してもらいましょう!!
 では、「博覧強記」の六郷課長!わかりやすくお願いします!!

六郷です。皆さん!第2回目「岩石試料の採取方法」についてですが、まず、岩盤や露頭などから試料を採取する必要があります。ここで、「岩盤」とは、例えば、地盤工学会JGS3811(★)によれば、次のように定義づけられています。「岩盤:岩石で構成された自然地盤で、一般的に、岩盤の内部には不連続面が分布すると共に、様々な程度の風化/変質を伴う。」とされています。それに対して、「岩石」は、様々な程度に固結又は結合した鉱物の集合体で、「不連続面を含まない岩盤部分の地盤材料」であるとされていますね。つまり、不連続面や風化変質部分を含むのが「岩盤」で、これらを含まないのが「岩石」になります。

写真-1 結晶片岩の岩盤(長瀞の岩畳)
写真-1 結晶片岩の岩盤(長瀞の岩畳)
写真-2 ボーリングで採取された岩石試料
写真-2 ボーリングで採取された岩石試料(★

写真-2 のような岩石試料を採取するためには、一般的には、岩盤ボーリングを行います。通常孔径は、φ66㎜~φ116㎜程度のボーリングで岩盤内部から岩石サンプルを採取してくることになりますね。当然、岩盤内には風化変質部、亀裂などの不連続面が様々存在するため、岩盤ボーリングで岩石試料を採取するには大変な苦労や高い技術が必要となりますね。
 なお、土試料や風化岩及び比較的柔らかな軟岩類では、露頭や基礎底盤などからブロックで試料を採取する場合もありますよ。地盤工学会基準のJGS1231「ブロックサンプリングによる土試料の採取方法」が基準化されており、土試料や柔らかな岩石では、この基準に準じたサンプリングが行われています。この方法では、❶切出し式と❷押切り式との2種類のブロックサンプリング手法が基準化されていますね。特に、この方法では実際に試料を観察しながら丁寧にサンプリングを行うため、乱れの少ない試料が採取でき、同じ状態の試料が揃うため優れたサンプリング方法と言えます。なお、今回は岩盤ボーリングによるサンプリングを中心に試料採取の紹介をしたいと思います。
 岩盤ボーリングとしては、表-1 に多重管サンプラーの種類と適用地盤とをまとめています。ここで、多重管サンプラーとは、二重管(デニソンサンプラー)や三重管(トリプルサンプラー)の多重管構造のコアチューブサンプラーのことで、硬さが中位から硬い粘性土や締った砂質土、軟岩や岩盤から試料を採取するためのサンプラーのことです。

表-1 多重管サンプラーの種類と適用する地盤との種類(★一部加筆)
表-1 多重管サンプラーの種類と適用する地盤との種類

 岩盤用としては、ロータリー式スリーブ内蔵二重管サンプラーやロータリー式チューブサンプラー(多重管)などが適用とされているね。
 岩盤を掘削するための重要なツールスとしては、掘削用のビットがあります。土砂や軟岩から中硬岩の掘削には「メタルクラウン」ビットが適用されますが、硬岩以上では、ダイヤモンドビットでないと掘進が困難となります。この2種類の掘削用ビットについては、写真-3及び写真-4 に示しています。さらに、国土交通省の設計業務等標準積算基準書(地質調査編)の岩分類については、ボーリングの掘削状況及び弾性波速度や一軸圧縮強度と岩分類とを対比させて表-2にまとめています。

写真-3 ダイヤモンドビット
写真-3 ダイヤモンドビット
写真-4メタルクラウンビット(三栄製作所(株)資料)
写真-4メタルクラウンビット(三栄製作所(株)資料)
図-1ボーリング掘削イメージ
図-1ボーリング掘削イメージ(★
写真-5 油圧式ボーリング機械例((株)ワイビーエム資料)
写真-5 油圧式ボーリング機械例((株)ワイビーエム資料)

表-2 設計業務等標準積算基準書による地質調査編の岩分類(★改表)
表-2 設計業務等標準積算基準書による地質調査編の岩分類

六郷課長!! 国土交通省の資料では、軟岩や破砕帯を除くと、硬い岩石では、「中硬岩・硬岩・極硬岩」に対して、強度、弾性波速度やボーリングの掘進状況などから区分しているのですね! Ah, that makes sense.  そうそう、破砕帯や軟質な箇所からのサンプリングは可能なのですか。 バラバラになり、試料にはならないのでは?What do you think about on this point ? Nothing comes to my mind.

いい質問だね。最近のボーリング技術には、新しい工法も開発されているようだよ。例えば、「品質の高いコア」を採取するために、掘削流体に水溶性ポリマー系の増粘泥水剤を添加する方法、気泡を添加する方法や大口径ボーリングなどが開発されているよ。水溶性ポリマー系の増粘泥水剤を使用するサンプラーはGPサンプラー(★)と呼ばれ、主に、未固結な地盤から高品質な試料を採取するサンプリング技術で、従来凍結サンプリングでないと採取できなかった地盤試料を、同等の品質で採取できる方法だけど、残念ながら、岩盤用ではないみたいだね。その他に、微細気泡(マイクロバブル)を使用した高品質コア採取工法(IFCS工法:★)などの方法もあるよ。この方法では、掘削水中に微細気泡を混ぜることで、掘削ロッドやビットの摩耗を軽減し、微細気泡の自動スライム(掘削時の切粉)により低圧・低量で送水できるため、スライム排除効率が向上し、送水圧と間隙水圧とがバランスすることから、孔壁やコア内への清水浸透、微粒分流失の防止により、高品質なコアが採取できるみたいだよ。主に緩い砂層、岩盤中の破砕帯、地すべり層や盛土部など広範囲に適用できるみたいだね。写真-7には大口径ボーリング三重管サンプラー(★)で採取した熱水変質部のコア写真を示しているよ。

通常、なんらかの高品質サンプリング方法で、試料が採取され、コア観察やコア写真撮影などが終了したら、試験室に搬入後、所定の寸法に成形されることになりますね。

写真-6 熱水変質部からの採取コア
写真-6 熱水変質部からの採取コア

それでは、この1m規模のコアをどのようにして試験用の試料にするのですか?
 私、まだ成形する作業教えて貰ってないのでわかりません!! なれないと危険な作業だと思います。できればこの作業はパスしたいなあー。

 蒲田さん! そのとおりだよ。岩石試験では、通常、φ50㎜×L100㎜の供試体やφ35㎜×L70㎜の供試体で圧縮試験を行うことが多いので、φ50㎜の場合は103㎜程度、φ35㎜の場合は73㎜程度の長さにコアカッターで切断後、所定の縦横比(直径1:高さ2)に仕上げるために、平面研削盤により試料の上下端面をほぼ鏡面仕上げなみの精度で研削し、供試体端面及び側面部の平面度・平行度はしっかりと確保しますよ。
 また、ボーリング試料では、通常φ66㎜で掘削されるため、コア径は約φ50㎜程度、削孔径φ86㎜で、コア径は約φ70㎜、削孔径φ116㎜では、コア径が約φ100㎜程度になります(★)。また、コア径がφ50㎜以上では再コアリングを行う場合や、状況に応じて、φ50㎜からφ35㎜に径を落として試験をする場合などもあり、色々ですね!

写真-7 岩石用カッターでの試料の切断
写真-7 岩石用カッターでの試料の切断
写真-8 室内ボーリングによるコアサンプリング
写真-8 室内ボーリングによるコアサンプリング
写真-9 平面研削盤や岩石用カッター等
写真-9 平面研削盤や岩石用カッター等
写真-10 成形後の供試体(花崗岩)の精度確認
写真-10 成形後の供試体(花崗岩)の精度確認

<引用・参考文献など>
(1)岩盤の工学的分類方法:地盤工学会(JGS3811).
(2)コア分析:石油資源機構株式会社技術資料.
(3)地盤調査の方法と解説(第5章サンプリング):地盤工学会,平成25年.
(4)設計業務等標準積算基準書(平成23年度版、地質調査業務:参-3-2-1:国土交通省).
(5)設計業務等標準積算基準書(同上:第2章地質調査市場単価:国土交通省).
(6)GPサンプラー:基礎地盤コンサルタント株式会社資料.
(7)高品質サンプリング(IFSC工法):中央開発株式会社資料.
(8)大口径三重管サンプラー(試料径140㎜):大日本ダイヤコンサルタント株式会社資料.
(9)ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説:一般社団法人全国地質調査業協会連合会,pp.119,平成27年6月.

以上

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