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第5回目岩石試験を知ろう! 岩石の三軸圧縮試験
今春昇格した
羽田技術部長
皆さん!!羽田です! 今回は、「岩石試験を知ろう!!」の第五回「岩石の三軸圧縮試験」について解説をしてもらうつもりです。私事ではありますが、今春の人事で「どうにかやっと部長」に昇格しました。これも皆さんのご尽力のお陰です。深謝!深謝です。では、六郷課長!! 「岩石の三軸圧縮試験」に関する解説をお願い致します。
それから、山王係長もよろしく!
では、六郷です。羽田さんおめでとうございます!技術部長昇格よかったですね!!課長から「部長」に昇格するには、技術や人間力以外に「経営管理」や「労務管理」などのマネジメントスキルがないと難しいのでしょうね。私もそろそろそちらの分野のスキルを強化しないとまずいですね。
それでは、「岩石の三軸圧縮試験」について説明いたします。なお、「岩石の三軸圧縮試験」に関する基準としては、JGS基準(地盤工学会基準)が代表的です。
なお、JIS-A-0207(地盤工学用語)によれば、「岩石」の定義(★1)としては、「不連続面を含まない岩盤の実質部分。様々な程度に固結または結合した鉱物の集合体である。」としています。
岩石は、通常、軟岩と硬岩とに大別されます。第5回の「岩石の三軸圧縮試験」では、軟岩ではなく、「硬岩の三軸圧縮試験」を話題の対象としています。ここで、蒲田さん!!
では、軟岩と硬岩との区分はどうなっているかわかりますか?
まず、「触って柔らかいのが軟岩」で「カチカチに硬いのが硬岩」です!!その程度はわかります!恐らく強度試験で仕分けされているのでしょうか?
蒲田さん!感性ではなく、一応、工学的区分がされているみたいよ。でもさすがねー
硬岩の区分は、一軸圧縮強度で仕切られているみたいよ。前述の地盤工学用語(★1)では、硬岩は25 MN/m2以上で、軟岩は25MN/m2未満となります。
表―1 硬岩の工学的分類及び定義について(★1)
Sorry section head, but I am trying to jump in this issue.
いや、いや、説明してもらって結構ですよ。 You can chip in anytime if you want.
岩石の三軸試験では、軟岩の場合には、土質材料と同様に、UU試験、CU試験 (CU試験)、CD試験など排水条件や間隙水圧の発生を考慮した試験もできますが、硬岩の三軸試験では、非圧密非排水条件のUU試験が一般的です。したがって、ここでは、「硬岩の三軸圧縮試験(JGS-2531-2020(★2)」としてUU試験についての説明をすることにします。
❶適用範囲:この基準では、岩石が非圧密非排水状態で軸圧縮されるときの強度・変形特性を求める試験方法について規定しており、主として飽和した岩石及び岩石質地盤材料(岩石と同程度の一軸圧縮強さを有するように改良あるいは人工的につくられた地盤材料)が対象ですが、未飽和の岩石や岩盤の固結度の低い破砕帯などの地盤材料にも準用できますね。
❷試験装置:三軸圧縮試験装置は、三軸圧力室、セル圧供給装置、圧縮装置及び荷重計、変位計、圧力計などから構成されていて、最大セル圧及び供試体の最大軸圧縮力に対しては、十分な耐荷容量や負荷能力を有すること及び装置のフレームのたわみが供試体の軸変位量に影響を与えないように高剛性のフレームとなっていることなどが要求されています。
❸供試体の被覆材:供試体の被覆材には、通常、ゴムスリーブ(厚さは、0.25~1.0㎜程度)を使用します。当組合では、3㎜厚のネオプレーンゴムスリーブを使用しています。その他に、熱収縮チューブ、シリコンゴムなどがあります。
❺試験方法の概要:まず、ゴムスリーブを被せた供試体を三軸室(セル)にセットし、所定の等方応力状態になるようにセル圧を負荷します。通常、硬岩の場合のセル圧媒体は、油を使用するため、耐油性に優れた「ネオプレーン」のゴムスリーブが良く使われていると思います。次に、セル圧を一定に保持しながら、軸ひずみ速度を一定にして連続的に軸圧縮を行うことになります。ここで、軸ひずみ速度は、毎分0.01~0.1%を標準とし、軸ひずみ量の計測は、供試体の側面部に貼付したひずみゲージ(縦・横のクロスゲージ)や外部変位計も使用します。
図―1 応力~軸ひずみ曲線
❻結果の整理は次の内容となります。
a) 供試体の軸ひずみεa(%)を以下の式で算出します。軸ひずみを直接測定した場合には、その値を(%)に変換しますね。
b) εa=(⊿H/H0)×10²
ここで、⊿H:供試体の軸変位量(㎜)です。
c) 軸ひずみεa(%)の時の主応力差(σa―σr)(MN/m2) を次式で算定します。
σa―σr=P/A(1-εa/100)×103
ここで、P:軸圧縮力(kN)。ただし、等方応力状態のときは、P=0となります。
σa :供試体に作用する軸方向応力(MN/m2) A0 :供試体の初期の断面積(㎜2)
σr :供試体に作用する側方向応力(MN/m2)
周方向変位や側方向ひずみを測定した場合には、供試体の側方向ひずみεr(%)およびポアソン比νを次式で算定します。 εr=(⊿L/πD0)×102、 ν=―⊿εr/⊿εa
ここで、⊿L:供試体の周方向変位量(㎜)。
d) 主応力差を縦軸に、軸ひずみを横軸に主応力差―軸ひずみ曲線を作成します。
e) 主応力差の最大値(σa―σr)maxとし、その時のひずみを破壊ひずみεf(%)とし、いずれも四捨五入により有効数字3桁に丸めます。
f) 変形係数E(MN/m2)を次式で算定し、四捨五入で有効数字3桁に丸めます。
E=(⊿σa/⊿εa)×102、ここに、⊿εa :軸ひずみの増分、⊿εr :軸ひずみの増分に対応する軸方向応力の増分とします。なお、圧縮強さの50%における主応力差―ひずみ曲線の割線勾配を標準とし、必要に応じ、接線勾配も変形係数とします。割線勾配の変形係数をEs50 、接線勾配の変形係数をEt50と表記します。
ここで三軸圧縮試験において気を付けておく点として、拘束圧の設定は、拘束圧σr1、σr2、σr3をある程度の幅で設定することが必要です。硬岩の場合で拘束圧の間隔幅が狭い設定では、強度的にほとんど変化しないため、モールの応力円が重なり合い同心円になってしまう可能性が高くなりますので注意が必要ですね。
破壊包絡線については、一般的には直線包絡線とはならず、曲線包絡線で表示することが多いです。実務的には、必要とする土被り相当の拘束圧とこの曲線包絡線とが交差する箇所において、τ軸に対して、接線を引きτ、φを求めるなどの方法もあります。
写真-2 ボーリングで採取された岩石試料(★2)
山王課長! 硬岩の三軸圧縮試験における破壊包絡線にはどのような式が提案されているのでしょうか!直線式ではないのでしょう!
そうですね! 例えば、Hobbs、Murrelらは、岩石のせん断強度を、べき関数で表現する式を提案(★3)しています。 This equation is very excellent. What do you think?
τ=τ0+Fσnf
ここで、τ:せん断応力、σn:垂直応力、F,f:定数
なお、岩石材料の破壊規準(★2)としては、拡張されたモールクーロンの破壊規準やGriffithの破壊理論及び丹羽義次・小林昭一の修正Griffith(圧縮領域のみ)式や日比野の放物線式や、Hoek and Brownによる実験結果に基づく破壊基準式などがあります。この場合、破壊時の最大主応力をσ1、最小主応力をσ3、割れ目のない新鮮な岩石の一軸圧縮強さをσcとし、sとmとは岩石の性質と過去の応力履歴とに関する定数としています。
σ1=σ3+mσcσ3+sσc2 (Hoek and Brown1980)
では、岩石(硬岩)を対象とした三軸圧縮試験の意義を考えてみましょう。硬岩領域の岩盤では、節理や断層などの不連続面の影響が大きく岩盤物性や岩石物性に大きく影響を与えます。通常は、不連続体である岩盤を対象とした原位置岩盤試験結果と室内岩石試験結果とは一致しないことが多く、軟岩材料と異なり、岩盤の力学挙動を室内試験ですべて代表させることは困難です。したがって、三軸圧縮試験の工学的意義は軟岩材料と比較するとやや低下するものと考えられます。ただし、例えば、硬岩を対象とした「大規模な岩盤空洞」の掘削などでは、事前の基本設計の段階で、数少ないボーリングデータから、大まかに対象岩盤の岩盤等級分布の推定や、三軸圧縮試験などの室内試験結果を用いた弾塑性解析等により空洞の安全性や施工条件の検討などを行うこともあります。さらに、硬岩立地の大規模橋梁や重要エネルギー施設等の基礎岩盤の物性評価(岩盤等級ごとの物性評価)などにも利用されているはずです。さらに、地下20㎞程度までの地殻内地震の発生メカニズムの検証や断層運動の解明などに対しても、高拘束圧下における硬岩材料の三軸圧縮試験は有効に利用されています。
写真―3 原位置岩盤せん断試験例(★4)
写真―4 原位置岩盤変形試験例(★4)
では、山王課長!!「高圧拘束圧下における岩石の破壊状況」についてはどうなるのでしょうか!土質材料とだいぶ様子が異なるのでしょうか?
そうですね。例えば、星野一男・井波和夫(★5)は、高拘束圧下の岩石供試体の破壊形態について分類しており、低い拘束圧下においては、「弾性に近い変形」を、拘束圧が大きくなると、非弾性的な挙動となるとして、以下のような形態分類を提唱しています。
❶楔型(くさび型:wedge fractures)、❷単一せん断型(single shear fractures)、❸網の目型(network shear fractures)、❹流動型(flow)の4種類に分類しています。
ビックリですが、高拘束圧下では、土質材料と同様に樽状破壊になっていますよ。
また、これらの分類の実際の実験例としては、星野一男ら(★6)のデータ集表紙部に貼付されている試験後供試体を写真―5として示します。
(拘束圧) 150MPa, 100MPa 50MPa 0.1MPa
写真-5福島県長谷川層群滝層から採取した流紋岩の高圧三軸圧縮試験後供試体(★6)
<引用及び参考とした文献等>
(1)JIS-A-0207:地盤工学用語,日本規格協会,2018年.
(2)地盤材料試験の方法と解説,地盤工学会,2020.
(3)三木幸蔵:わかりやすい岩石と岩盤の知識, 鹿島出版会, pp.106 ,昭和53年.
(4)原位置岩盤試験写真:大日本ダイヤコンサルタント(株)資料.
(5)星野一男・井波和夫:「物性変化からみた圧密の進行について」, 石油技術協会,
第42巻,第2号,昭和52年3月.
(6)星野一男・加藤碵一(ひろかず)・田中莊一・小俣明・森口安宏・服部昌樹・今村哲己:本邦産岩石の深部物性データ集,地質調査総合センター速報,No.23,産業技術総合研究所,地質調査総合センター,2001.など
以上