関東土質試験協同組合
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第3回 現場と土質試験のあれこれ

一軸圧縮試験と三軸圧縮試験の対比

理事 馬場栄治

1. はじめに

関東土質試験協同組合のホームページの連載コラムとして「現場と土質試験のあれこれ」についてのコラム寄稿を依頼されいつの間にか原稿期限がせまってきた。
 まずは「コラム」とは何かなと思い、最近は重宝しているWikipediaにて検索してみた。
 

コラムとは
「原義は円柱のこと。円柱形、円筒形または柱状のもの一般を指す。分野によってカラムとも表記する。」
これは違いますね。 次に記述されているのは以下の文面です。
「新聞・報道雑誌・ニュースサイトなどに掲載される、ニュース以外の記事。つまり、個人的な分析・意見が含まれている記事で、評論やエッセイの他、人生相談コーナーや「オススメ○○」などといったものも含まれる。コラムの執筆者を、コラムニスト(Columnist)という。」
これですね。また、コトバンクでは次のように記述されています。
「コラムは、市井のできごと、自然、四季の移り変わりに至るまで素材化でき、1人の筆者が主観的な感想を述べる場合が多く、読者により親しまれるものとなっている。」となっています。
 現場と土質試験をつなげると、どうしても施工管理等の業務に繋がり、それ以外の大変な思いをした現場条件の話はテーマの土質試験に関連しないことが多く、ここでは控えようかと思います。
 そこで、個人的な分析や見解がゆるされるとして、土質試験について私が常に感じている個人的な意見を書きます。

2.一軸圧縮試験と三軸圧縮試験はどちらがいいのか

結構な頻度で聞かれるのが、一軸圧縮試験と三軸圧縮試験(UU)はどちらの試験を実施するのが良いのかと聞かれることが多いです。私はいつも、どちらも試験としての信頼性を高め、互いを補完的な役割をするため両者での試験をお勧めしております。必要とされる設計定数粘着力(C)kN/m2は、一軸圧縮強さqu/2=C kN/m2としてφ=0°としていますから、一軸圧縮試験で十分に必要となる設計定数を得ることが出来ます。特に沖積層の粘性土層は、φ=0°としての扱いが強く、深度方向への強度増加があることも知られております。この、沖積粘性土の一軸圧縮試験からの深度分布図は大切な情報となります。
 今回紹介する事例は、軟弱な沖積粘性土層が堆積している地盤(図-1地層断面図参照)より乱れのすくない試料を採取し、関東土質試験協同組合様にお願いして実施した結果です。

図-1 東京低地部の地層断面図

写真1~3に試験に用いた試料写真を添付しますが、試料は暗灰色を呈し、小さな貝殻片を混入する典型的な沖積粘性土です。


写真-1(GL-4.0m)

写真-2(GL-12.0m)

写真-3(GL-21.0m)

話はズレますが、このような沖積粘性土を試験供試体として整形するには、新人が初めて対峙するには最も適した扱いやすい土質試料かと思います。


図-2 粘着力の深度分布図(三軸UU:一軸(qu/2))

さて、その試験結果の深度分布図を図-2に作成して示しました。また、同時に実施した三軸圧縮試験とも比較するためqu/2= C kN/m2として深度分布図を示しました。非常に良好な結果が得られていると思います。これは、一軸圧縮試験と三軸圧縮試験の両者を実施することで、設計定数を決定するための信頼性が高まった良い例だと思います。
 現場で苦労して採取した試料から、良い結果を得るためにも精度の高い土質試験を実施することが必要と思います。

3.おわりに

私が常に思っていることを書きましたが、一軸圧縮試験と三軸圧縮試験を実施するのは、沖積粘性土に限らず全ての土質が対象と思っています。
 重要な設計定数を決めるためには、精度の高いサンプリング技術と試験技術が必要不可欠であり、出来るだけ多くの情報が欲しいと思います。
 実は一軸圧縮試験と三軸圧縮試験の結果が乖離することも多く、そこには何が影響しているのかサンプリングにより乱れが生じたのか、機械的に結果を伝えることでは無く何気ない情報が有効になることもあります。
 自然が作り出したものから、一部分を取り出し全体を評価することが多いため、少なくとも出来る試験は極力実施して、総合的に判断していくことが必要と考えています。

なので、一軸圧縮試験と三軸圧縮試験はどちらか一方では無く両方を実施したいと常に私は思っています。

以上

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